2006年07月29日

伏せたくさせちゃおう、強情犬

フセの成功率が一番高いのはベッドやソファーの上だった。

フセ計画が始まって数ヶ月で、奴はひづめ欲しさに嫌々ドッグベッドの上で伏せたのだが、その後は鳴かず飛ばずで、ほんとうに忘れたころにやってみる程度で、フセのコマンドが入っていると言うにはほど遠い状況が数ヶ月続いた。それでも、偶然か奇跡か、数回成功したことがあるのだが、それはいつも姫がベッドやソファの上に乗っていて、管理人がそばに座り込んでいるときばかりだ。

そこで管理人は考えた。もしかして、飼い主の視点が姫には重要なのかもしれない。上から見下ろされる状況が心地よくないとしたら、床ではぜったいにフセをしないのも頷ける。

そこで、オスワリのときにやったように、姫がフセの姿勢で休んでいるのを見かけるたびに、大げさに褒めちぎる褒め褒め攻撃を続けるかたわら、我が家で一番高い位置になるベッドの上の犬用マットレスで集中的にフセのお稽古をしてみることにした。姫がマットレスに乗っているとき、管理人が床に座れば、姫と管理人の視線はぴったり同じ位置になる。

じっさい、フセの姿勢で蹴られたことのある犬は、人間がそばに近づくと慌てて起きあがるという話もあった。姫がそのような虐待を受けていたかは知らないが、ともかく上から見下ろされることに不安感があるのはまちがいない、という気がしてきた。

で、マットレスの上でのフセ集中トレーニングを始めたところ、最初は30回に1回、そのうち20回に1回というように、だんだんと成功率が上がっていった。

そんなことをしている最中、ディーの病気が発覚し、管理人は姫のフセトレーニングどころではなくなってしまった。ちょうど仕事が入っていたこともあって、ディーが闘病生活を送っていた約1ヶ月は、カイや姫の世話までほとんど手が回らなかったのだ。

いわば、この間姫はネグレクトされていた状態だった。管理人が驚いたのは、姫がその状況に対して一切の抗議行動を起こさなかったことだ。いままでのパターンから行くと、自分が無視されたりしようものなら、物を破壊したり糞尿をまき散らしたりして、目一杯の抗議行動をしていたからだ。

その1ヶ月間、姫は一度も怒られることをしなかった。ディーを見送り葬式を済ませてふと気づけば、いつの間にか廊下でのお漏らしなしの記録も2ヶ月以上の新記録を更新していたのだ。

ディーの葬式と前後して仕事もいちおう片づいたので、管理人はこれまでの埋め合わせとばかりにカイと姫をグリグリしまくる生活に戻った。もちろんトレーニングも再開したのだが、正直、丸々1ヶ月空いてしまった以上また一からやり直しも覚悟していたのだ。

ところが……

驚くことに姫は「ダウン」のコマンドを忘れてはいなかった。それどころか、一気に成功率が100%にまで上がったのである。

無視され続けた1ヶ月で姫は姫なりに考えたのかもしれない。フセをすれば管理人は小躍りして喜ぶこともちゃんと知っていた。だから、ようやく管理人に振り向いてもらえることになったとき、ぜったいに褒められると判っていることを自らやって見せたのだろう。

犬という動物は人間が考えているよりもずっと利口ですばらしい、と管理人が思うのはこういうときだ。とくに一般的にはコマンドが入れにくい訓練性能が低いダメ犬と思われがちなハウンド系は、まわりの状況を見極めて何をすべきかを自ら判断する能力に長けている。姫にとって、そのとき一番欲しかったのは管理人の注目だ。何しろ1ヶ月ものあいだ、いくら欲しても与えられなかったのだから。それが手に入ると判った瞬間、どうすればいいか、姫はきちんと判断したのだ。

犬のしつけには波がある。管理人は専門家ではないので、体験だけからしか言えないが、パピーのしつけというのは基本的に常時上向きのコンスタントな上昇カーブだ。それに対して、姫のように一度しつけに失敗した成犬の躾なおしの場合、そのカーブに波がでる。巧く上向きでコンスタントに上がるときはいいが、まったく成果が見えなくて投げだしたくなる時期もある。だが、その時期を超えればまた緩やかな上昇カーブが始まるのだ。管理人のようにいつかはまた上向きになると知っていれば、成果が見えなくとも続けることはできるのだが、たいていの人は、これがこの犬の限界だ、と諦めてしまうようだ。

最近管理人がことあるごとに「問題行動でもあまり気に病まないで楽しくいこうよ」と言っているのはそのためだ。犬との暮らしで、何もかも巧くいかなくてイライラする時期というのは誰にでもあるのだ。そこで巧くいかないものを無理矢理続けてますますストレスを溜めるくらいなら、べつにいいじゃん、と腹をくくって他に目を向けて見るのも大切だと思うからだ。トレーニングは休めば後退することもあるが、取り返しのつかない後退などありえない。飼い主も犬も嫌気がさしているのに無理にトレーニングを続けるくらいなら、いっそぜんぶ止めてしまってもかまわない、と管理人は思っている。それでも、いつだってやり直しはきくのだから。もしそこでやり直しがきかないとしたら、成犬の躾なんて最初からできないわけだし……

ともかく、そんなこんなで姫は犬用マットレスの上でなら、どんなときでもフセができるようになった。むろん、最初は管理人だけが見ている前で100%まで精度を上げ、その後、家人を部屋に連れ込んでその前でやらせる練習をした。最後はお客さまが来たときに前でやらせてみたのだが、天敵の子どもが部屋にいる状態でもちゃんとできるようになったので、フセトレーニングファーストステージはみごとにクリアということになった。

ほら見てみぃ〜ちゃんとフセができるようになったぞぉ〜

管理人としては、胸を張って世界中に吹聴してみたい気分なのだが、ここでまたもや大きな落とし穴に気づいたのだ。

姫はたしかにマットレスの上でならちゃんとフセができるコになった。だが、大好きなマットレスがないとまだダメなのだ。ということは、姫のフセを世間にお見せするためには、どこにでもこの巨大なマットレスを持ち歩かなくてはならない(涙)

というわけで、現在は持ち運びができる座布団サイズまで敷物を小さくすべく、ドッグベッド→大型クッションとせっせと縮小化に精を出している管理人なのである。

ニックネーム 犬猫屋敷の管理人 at 12:10| Comment(4) | TrackBack(0) | しつけ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
飼い主にマイ・マットを持ち歩かせて、
そこにしか伏せない犬・・・。
いいねぇ〜。

管)姫さま、このあたりでいかがでしょうか?
姫)そうね、もう少〜し日陰に敷いて頂戴・・・そうそう、結構よ。さ、どうぞ。
管)伏せ!
姫)ハイ、「伏せ」ね。これでいいかしら?


「姫」という名に恥じない振る舞いです。
Posted by ワハ母 at 2006年07月31日 09:08
ワハ母さまの言うとおり!姫さまだね〜〜(^^
あのふせの裏側には、こういった事情があったのね 管理人さん。
お疲れさまでしたぁ!
Posted by つむぎ at 2006年07月31日 10:26
★★ワハ母さま江★★

たしかにね。フセをさせているというより、フセていただいているって感じがしますわね。そのうち実現するかもしれない秋の園遊会では、唯一の余興がこれになるかも。

==犬猫屋敷秋の園遊会進行表==

13:00 開会

犬をグリグリしながら歓談

15:00 姫さまのフセ

犬をグリグリしながら歓談

17:00 閉会

            以上

いかが?

PS……ついに夫の家を乗っ取ったのか?!
Posted by 管理人 at 2006年07月31日 14:58
★★つむぎちゃん江★★

そーなのだよ。あの裏には汗と涙の奮闘記があったのだ! チビくんの前でできたっていうのは、ある意味姫にとってブレークスルーだったのね。あのとき、管理人は心の中でガッツポーズをしておりました。さて、こんどは家の外でできるかどうかだ……ガンバ!
Posted by 管理人 at 2006年07月31日 15:00
この記事へのトラックバックURL
http://a-thera.com/tb/391879
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック