2006年08月22日

おかん

妹も管理人も仕事が休みだったので、犬猫人間の餌を買い出しにコストコに行った。

ちょうど帰りの高速を降りたところで5時ちょっと過ぎになったので、途中で祖母の家に寄ってバァバを拾っていくことにした。

「いま高速の出口なんだけど、お迎えいる?」

「あら、うれしいわ」

「じゃあ、15分くらいで着くからすぐ出られるよう準備して待ってて」

「はぁ〜い」

年老いた親を迎えに行く、なんと心優しい娘たちだろうか。だが、目頭が熱くなるような、こんな親孝行話の美談ですら、犬猫屋敷ではネタになってしまうのだ。

うちのジィジ・バァバは車に乗るとハイになる。まるで犬たちが、車のエンジンをかけたとたんに意味もなくガレージの周りを走りまわるのと同じように、車でお出かけが大好きなのだ。それがたまたま所要時間30分足らずの祖母の家からの帰り道であってもその興奮は変わらない。ゆえに、車に乗り込んだとたん、バァバは弾丸のようにしゃべりだす。

「迎えに来てくれてよかったわぁ〜あんまり暑いからどうしようかって思って、もう少し経ってから帰ろうかなってもたもたしてたのね。5時に出てたら行き違いになってたわね。ほんとうによかった。だってあんまり暑いから…………」

堂々巡りしてまっせ!

犬たちの場合、いくらハイになったとしても、車の中で大声を張り上げて吠えたり騒いだりは決してしない。パピーの頃からそういうことはしてはいけない、とちゃんと教えているからだ。だが、バァバの電撃トークを止められる者はいない。「う〜」とか「あ〜」とか適当にあいづちを打っているかぎりバァバは永遠に話し続ける。

きょう祖母の家であったこと。

祖母の家で聞いてきた、親戚の皆さんの近況。

コストコで何を買ってきたかの確認。

家の戸締まり、火の元の確認はきちんとしたか、の注意。

それから……それから……

この人は、いつ息継ぎをしているのだろうか? 血のつながった親ながらエイリアンに見えてくる。

途中、通勤帰りの車のプチ渋滞に遭遇した。さっそくバァバは後部座席から身を乗り出し、抜け道の道案内をはじめた。

「次を右、その先左……あれ?」

わからないなら、教えるな! おかげで遠回りになったじゃないか!?

でもバァバは参加したいのだ。運転手の妹とナビの管理人の会話になんとか食い込もうと必死になる。

「あっ! 危ない、気をつけて」

「なにが?!」

「前から車が来てる!」

運転手が前は見ている……少なくとも……あんたが心配することじゃない。かえって危ない!の声でビックリして事故るじゃないか、止めてくれ。

「あっ、気をつけて!」

「こんどはなに!?」

「うしろからトラックが来てる」

「だから?」

「トラックって大きいから、ふつうの車にぶつけても何とも思わないのよ。だからトラックの前を走っちゃダメ!」

それは、ものすごぉ〜い偏見だと思う。どんなに相手が小さな車でも、やっぱりぶつかったら気づくだろう。だいたい、追い越しもできないこんな細い道でそんなこと言われても、いったいどーしろっていうんじゃい!

バァバに言わせると、世の中は危険に満ちあふれている。バァバの持論によれば、雨の日や夜は車に乗ってはいけないのである。

「暗かったりすると前がよく見えないから、危ないのよ!」

ちなみにピカ天の日も日差しがまぶしくて前が良く見えないので非常に危ないらしい。そうなるといったいいつ車に乗ったらいいのやら? 車を所持していることじたい非常に無駄な気もしてくる。

それでも、バァバは車でお出かけが何より好きだ。だから車に乗るとハイになる。

ようやく家にたどりつき、大騒ぎしながら買ってきたものをすべて家に運び込んだあと、ガレージに車を入れようとした妹がぽつりとつぶやいた。

「あのトークのパワーをエネルギーに替えられたら、究極のエコになる」

仰るとおりでございます。片道1時間のコストコまでの往復よりも、最後の30分で異常に疲れたほどのあのパワーである。あれを石油に変わる代替エネルギーとして利用できないのは、まったくもって残念なことだ。

以前ふと目にしたメルマガの記事を思いだした。どこの家でもおかんは一緒で、弾丸トークで家族を呆れさせるのだ。

そこに愛があるから? たしかにそうかもしれないが、時として無駄吠え防止首輪をつけてみたいと思う管理人はやっぱり親不孝な人間なのかもしれない。

ニックネーム 犬猫屋敷の管理人 at 00:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 管理人の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする