2006年07月25日

オジサンの一日

自分ってもしかすると、出稼ぎ先の会社で一番エライ人なんじゃないかと思う瞬間がある。

たとえばきょうのように、社長をはじめとする役付きのオジサンたちが必死こいて明日のセミナー用の資料作りにいそしんでいるとき、それを尻目に独り淡々と独自の仕事をしていている自分を客観的に見た場合、どう考えてもこの会社で一番エライのは自分にちがいないと思うのだ。

べつに手伝わないというわけではない。じっさい、以前は「手伝いましょうか?」と何度も言っていたのだ。だが、そのたびに「管理人さんは、自分の仕事をしてていいから」と断られるので、最近は申し出る気にもならないのだ。ちなみに、管理人はこれでもOL生活が長いので、コピーして、ホチキスして、何冊かの資料をまとめてなんて作業はお茶の子さいさいである。じっさい、管理人が手を出せば、オジサンたちの数倍のスピードで作業を終わらせられる自信はある。

にもかかわらず、オジサンたちが一丸となって女工哀史的作業にいそしんでいるとき、管理人はいつも仲間はずれになっている。じつはいまのように内職が忙しいときは、会社では頭を使わない単純作業のほうがずっと嬉しかったりするのだが……

オジサンというのは計画性がないものだ。だから、今回も秒針との勝負で最後は人海戦術で資料をまとめあげていた。明日セミナーをやることは、すでに3ヶ月前から決まっていたにもかかわらず、なぜギリギリまで何もやらずに放っておくのか、オジサン的思考回路というのは管理人には理解できない。もしかすると刺激の少ない日常において、あと1分しかない、もう間に合わないというスリルが唯一の脳への刺激になっているのかもしれない。

秒針との勝負になっていたのは、できた資料を持ってオジサンのひとりがきょうの新幹線に乗らなければならないからだ。ちなみに世間には便利なサービスがあって、朝原稿をメールで送っておけば、夕方にはきちんと製本された資料を大阪で受けとるなんてことも可能である。にもかかわらず、オジサンは自力でコピーをし、それを束ねた膨大な書類をバックいっぱいに詰めて大阪に旅立っていった。

「Kinko’sに頼めばいいじゃないですか」

と管理人は言ったのだが、

「高いからダメ」

と即座に却下されてしまった。

全社員を動員して、丸一日かけてコピーする人件費を考えたら、1枚10円くらいかかっても外注に出したほうがどう考えても安いのだが、そういう計算はオジサンたちはしないらしい。ちなみに、最後は泣きが入っていたので、宅急便で送ればいいとも提案したが、それもその場で却下された。

万が一届かなかったらどうするんだ!?

とオジサンは言うのだが、彼がよたよたあの荷物を引きずって歩くほうがよっぽど危険が多いと管理人は思っている。

でもオジサンは自分以外は信じられない。だからコピーから製本まですべて自力でやりたがる。

ちなみに、大阪に飛ぶオジサンが出ていったあと、ついにコピー機がぶっ壊れた。けっきょくメンテの人を呼んだりして、きょうはほんとうに全員が一日中その作業にかかりっきりになっていた。

わざわざ大学院まで行って博士号をとりながら、トナーで手を真っ黒にしながらコピー機と格闘するのは空しくないのだろうか? と思う瞬間もあるのだが、本人が嬉々としてやっている以上他人が口を挟むことでもないのだろう。

管理人が帰るころには、終業時間を待たずして、オジサンたちは資料の完成を祝って満足そうににビールで乾杯をしていた。

「あぁ〜たまらんな、ひと仕事終えたあとの、この一杯!」

これがやりたいがために、オジサンたちはきょう一日女工哀史ごっこをしていたのかもしれない。その笑顔を見ていると、効率とか対費用効果とか小難しい経営用語なんかはどうでもいいな、という気がしてくる。

オジサンは、会社にいるときが何よりも一番幸せな人種である。

ニックネーム 犬猫屋敷の管理人 at 20:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 管理人の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする