2006年07月16日

クレートトレーニング

遅まきながら、クレートトレーニングをやっている。ディーの具合が悪くなってすぐ、バリケンを衝動買いしたからだ。

ご存じの通り我が家では、3頭のデカ犬が狭い管理人の部屋で勝手気ままに生きている。飼い主がわりとアバウトなせいか、犬たちもいたって大らかで、お互い踏んだり踏まれたりなんてことがあっても、さして気にしているふうでもない。だが、なんといってもディーは絶対安静の重病犬である。ゆっくり養生できる場所を確保してやろうと、清水の舞台から飛び降りた気になってバリケンを買ってやったのだ。

ところが、せっかく高い金を出して買ってやったにもかかわらず、ディーだけではなく他の2頭もぜんぜん中に入ろうとしないのだ。犬が入らないバリケンなんて単に場所塞ぎの邪魔物でしかない。そこで管理人は重い腰を上げて今さらながらクレートトレーニングを始めることにした。

まずはじめは、バリケンのなかにおやつを入れ、それ欲しさに犬がなかに入ったらたっぷり褒めてやることである。ところが、とりあえず中に首はつっこむのだが、全員おやつをくわえるとそそくさと出てきてしまうのだ。

クレートの中=おやつをもらえる=嬉しいことが起こるところ


という方程式を犬に刷り込もうとしているのに、これではただの食い逃げである。そこで管理人は考えた。

どうして中でおやつを食べられないのか? 暗くて狭い場所は犬にとって安心できる場所であるにもかかわらず、あの中にいることが不安になるのはなぜなのか?

答えはわりとすぐに出た。バリケンにはメッシュの扉がついている。それを開け閉めして使い勝手を試していた管理人のようすをそばで見ていた犬たちは、下手するとドアをガチャンと閉められて、あの中に閉じこめられるぞ!と思ったのだ。

そこで、せっかく組み立てたものをまた一度解体し、ドアを取っ払ってからもう一度おやつを中に入れてみた。

すると、さっきよりは奥まで入っては行くものの、やっぱりおやつを食べ終わると大慌てて出てきてしまうのだ。ふむ、ふむ。これは、あの中が安全で心地よいところなのだということを、まず教えなければならないかもしれない。

そこで、管理人は自らバリケンの中に入ってみた。デカ犬トリオにとって管理人は心の太陽である。管理人が大丈夫、と言えば怖いことは起こらないし、管理人のそばにいればぜったいに危険はないということは毎日の暮らしでしっかり刷り込んである。だから、その管理人がバリケンのなかで楽しそうにしていれば、きっと犬たちも安心して入ってくると思ったのだ。ちなみに、ふつうクレートトレーニングというのは、犬をクレートに入れるための練習で、飼い主がクレートに入る家は、たぶんあまりないと思う。じっさい、管理人がクレートに入ってはしゃいでいるところを見て、通りすがりの家人は深いため息をついていた。

だが、この作戦は大成功だった。管理人にグリグリしてもらいたい一心で、3頭が代わる代わる自らバリケンのなかに入ってくるようになったのだ。

読みが当たってご満悦の管理人だったが、ここでふと考えた。

ふつう、クレートトレーニングができている犬というのは、飼い主が「ハウス」とコマンドをかければ中に入っていくもので、クレートの中から飼い主が「ハウス」と叫んでいる図はあまり見ないぞ。

犬たちをクレートに入れる、という目的は果たしているが、これだと毎回先に管理人がクレートのなかに入って待っていなくてはならなくなる。

そこで、トレーニングの次のステップを実行することにした。こんどは、管理人なしでもクレートの中に入ってその場で留まっているための練習である。幸い、管理人がクレートの中は安全だ、と身をもって教えたせいか、前よりは格段に長い時間クレート内に留まることができるようになっている。一番奥に投げ入れたおやつでも平気で食べられるようにはなったのだが、やっぱりおやつを食べ終わるとそそくさとそこから出てきてしまうのだ。しつけマニュアルによると、おやつ投げ入れ方式で、犬はクレートに留まってそこでくつろぐことを自然に覚える、となっているのだが、素人トレーニングの哀しさで、またもやマニュアル通りの展開にはならないのだ。

まあ自己流でやっているとこういうことはよくあることだ。右手におやつを持ってこうして、ああしてとマニュアルに書いてあるとおりにやってみるのだが、そうすると、こうなりますね。という風にはならないのだ。お料理番組を見て、お肉に下味をつけて、オーブンレンジで20分焼くと、ほらこんなに美味しそうに焼き上がっています、なんていうのを真に受けて同じようにやってみたら、かつて肉だったらしき炭が目の前に現れた、みたいなものである。おそらく致命的なまちがいを犯しているのだが、素人にはそれが何だかわからない。たぶんオーブンレンジで20分と言われたのに、電子レンジで20分焼いてしまったようなことなのだが、それに気づくのはオーブンレンジで焼いてみたことのある人だけだ。たいていの素人はここで「このレシピはダメ!」と投げだしてしまうのである。

ちなみに、管理人は目の前に失敗作品が出てくることには慣れているので(←それがいいかどうかは疑問だが)それを何とか調理しなおして食べられるものにするのは得意なのだ。だから今回も自分なりに考えた。そしてひとつのアイデアがひらめいたのである。

犬たちがクレート内に留まらない原因は、投げ入れられたおやつを食べてしまったら、もうそこには用がないからだ。だったら中にいることでずっと良いことが起こり続ければ、そこに留まろうと思うはずだ。

管理人がクレートの中で犬をグリグリしていれば、ずっとそこに留まっていられたように、中にいるあいだずっと楽しいことが起こり続ければいいのだ。そこで目に止まったのがクレートの奥についている空気とりの穴である。クレートの中にいるあいだ、ずっとGood! と褒め続けながら、この穴からおやつを入れてみたらどうだろうか?

もちろん、結果は大成功だった。中にいれば継続的におやつが穴から落ちてくるのだ。犬たちがそこを天国だ、と思ってもとうぜんだろう。じっさい、一度クレートに入ったら、必死でその場所を死守すべく決して他の犬にその場を譲ろうとしないのだ。

「カイちゃん、次、姫のお稽古の番だから、出てらっしゃい!」

「いやです。ボクが先に入ったんですから、ここはボクの場所です!」

今回も大成功である。管理人の類い希なる妙案のおかげで、クレートは犬たちにとって、とても嬉しいことが起こる天国のような場所になったのだ。

こんな良いアイデアが浮かぶ自分の才能に酔いしれながら、管理人は目を細めてクレートに入っている愛犬のようすを眺めていた。アタシってば、もしかするとカリスマ訓練士になれるかもしれないわ。だって、あんなに嬉しそうに尻尾をぷりぷり振りながらクレートに入っているじゃない。尻尾を振りながら……? あれ?

ふつう、犬がクレートに入っているとき尻尾を振っているかどうかなんてわかんないよなぁ〜だって、ふつうはクレートってこういう風に入るものだもの。



ところが、うちの場合はこんな風

なんか変だわよね、やっぱり(滝涙)

やっぱり、どこかで何かをまちがえているのだ。今回もまた、致命的な失敗を犯したらしい。

でもいいでしょう。とりあえずクレートは大好きになったわけだし。今後はどうやってカイにこっちを向かせるか、それを考えていくことにしよう。

ニックネーム 犬猫屋敷の管理人 at 14:17| Comment(4) | TrackBack(0) | しつけ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする