2006年07月02日

戦い

サイトを離れていたあいだ、我が家に起こった最大の変化は、デカ犬トリオがデカ犬コンビになってしまったことである。

先月の末、犬猫屋敷の隊長犬ディーが虹の橋を渡っていった。サムライ・ジャパンの予選敗退が決まった6月23日のできごとだ。日本国民の願いも空しくジーコ・ジャパンに奇跡は起こらなかった。残念ながら管理人とディーにも奇跡は起こらなかったのである。

ディーの体調の変化に気づいたのはサイトを閉じて間もなくのことだ。胃腸系の強さには定評のあったディーが頻繁に下痢を繰りかえすようになったのだ。医者に行って下痢止めの抗生剤を投与してもらうといったんは収まるのだが、すぐまた同じ症状を繰りかえす。そんなことが1ヶ月ほど続いたあと、こんどは散歩の途中でいきなり歩けなくなった。何かがおかしい、これは単なる腹下しのレベルを超えている、と飼い主である管理人は考えたが、けっきょく獣医に行っても、単なる腸炎が慢性化したものといわれ、いつもの抗生剤を処方されただけだった。この時点で血液検査や検便もやっていたが、何一つ異常は出ていなかった。

その後、たまたま飛び込んだ別の獣医が幸運にも心臓内科の専門家で、以前愛犬(ゴールデン)を癌でなくした経験から、ディーがゴールデンMixだと聞いたとたん真っ先に悪性腫瘍の可能性を疑って、そちらを重点的に検査したところ、胃腸系ではなく心臓の真上に大きな血管肉腫ができているのが見つかった。すでに肉腫は心臓の1/5くらいの大きさまで成長しており、右心室を圧迫して血の流れを止めていた。

血管肉腫には抗ガン剤や放射線治療はほとんど効かない。また転移も早いことから治癒の見込みはほぼなかった。肉腫のせいで心臓が弱っているため、麻酔のリスクが高すぎて手術もままならない。まさに八方ふさがりの状況だった。ちょうど日付が6月に変わろうとしていたころの話である。

それからの1ヶ月はまさに時間との戦いだった。正直、癌が見つかった時点で余命数日といわれてもおかしくない状況だったし、じっさいあのときたまたま良い獣医に巡り会えなければ、ディーは理由もわからないまま1週間ほどでこの世を去っていたにちがいない。ただ痛み止めを投与し、美味しいものを食べさせて、できるだけ体力をつけることで余命を伸ばすだけの毎日だったが、それでも最後の日々をディーと共に楽しく暮らせたことを、管理人は幸運だったと思っている。

時間との競争は同時に気温との戦いでもあった。いきなり気温が上昇すると確実にディーの体調は悪化する。毎晩祈るような気持ちで明日の天気予報を見ていた。

「あと1日、どうかあと1日、27度を超えませんように……」

癌に効くといわれるサプリメントを買い込み、せっせとのませていた飼い主の祈りも空しく、腫瘍はみるみる成長していった。毎週エコーをかけるたびに1cmずつ大きくなって心臓がますます圧迫されていく。それでもディーは最後の夜までちゃんと散歩に行っていた。暑いなか歩きまわることでとうぜん心臓への負担は大きくなるのだが、それでも管理人はディーが散歩に行きたいというのを止めなかった。大好きな散歩の途中で息絶えてしまったら、それはそれでしかたがない。30kgの巨体を抱えて帰る覚悟はできていた。

毎晩、気温が下がる真夜中にディーを連れて近所を歩きまわった。気温が低く体調が良いときはちょっと無理してお気に入りの公園まで脚を伸ばした。痛みのせいでほとんど上がることのなくなった尻尾をぴんと立てて、ディーはあちらこちらの臭いを嗅いだ。いつもはトレーニング用にほんの少ししかもらえない牛レバーが、最後はディーの唯一の栄養源になっていた。散歩をしながら大きめのレバーをちぎって口に入れてやる。

「えらいね、ディー。良いコだね。Good Boy!」

オスワリもお手もフセもする必要などない。その時点では生きていることだけで、ディーはGood Boyだったのだ。

最期の時はあまりにあっけなくやってきた。いつもの通り肉の夕飯を平らげ、大好きなグリーニーズも堪能し、短いながら夜の散歩にも行ったあと、夜半からとつぜん症状が悪化した。食べ物も水も薬さえ受けつけなくなり、日本がブラジルに大敗するころには排泄も止まってしまった。犬も人間も一睡もできないまま、翌朝病院に行って強めの痛み止めを打ってもらった。もはや安楽死させるしかなかったが、せめて仲間の犬たちや家族にきちんとお別れをいわせてやろうといったん家に連れ帰ったところ、昼過ぎに管理人と仲間の犬たちが見守るなかでディーは旅立っていった。

享年7歳7ヶ月。あまりに短すぎる犬生だったが、みんなに愛され可愛がられて幸せな一生だったと管理人は信じたい。

いまディーは虹の橋の向こう側で、先に逝っている先住犬や猫たちと共に管理人や仲間たちが来る日を尻尾を振り振り待っている。

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ニックネーム 犬猫屋敷の管理人 at 12:25| Comment(7) | TrackBack(0) | DJ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする